liite_13-37

雑な文章、メモ、記録。

散る

しおり

二年生になったら履いても良い紺ソックス。くだらないことで友だちと喧嘩して、お昼休みに音楽室へ逃げ込んだ。なにかあるといつも、部室であるこの場所に来てしまう。グランドピアノの影に座り込み、お昼の放送を聞きながら泣き疲れる。音楽家たちの視線は…

夜中に割ってしまったマグカップが寝ている間に金継ぎしてあった。だれかの飲みかけの珈琲にはマーブル模様が浮かんで甘ったるそうに見えたので、ぼくはテーブルの上にあったゼムクリップを三つほど珈琲に入れた。スプーンでかき混ぜるとようやく均一な色に…

うつわ

遠くではじける花火に見惚れていたら、わたしという空っぽな器には意味が与えられていた。ここのところ、ずっと喉が渇くんだ。高校の自動販売機でメロンソーダを買って、飲み干したら歩くたびにしゅわしゅわと音がした。空になったペットボトルは案外頑丈で…

犬のように飴玉を待って、口を開けば閉じた鋏が舌に当たる。ひんやりとした金属の味がゆっくりと喉の奥まで近づいて、嗚咽する瞬間に出て行った。目を開けられずにいると、呼吸の前でかしゃんと鋏を閉じる音がして、ぼくを予期させる。痛みには誤差があって…

夜明け

慣れてしまうともうどこにも行けないような気がして、少しだけこわくなる。だけどそれは安心することと同じなのかもしれない。知らない匂いに埋もれているうちにそこに居るわたしはわたしではなくなっていく。強固な執着でさえ変容するものなのだと気付かさ…